
Googleマップや予約サイトに寄せられた口コミを、自院サイトの『患者様の声』へ転載したい。院内アンケートの好意的な回答を、SNSや広告へ載せたい。こうした相談では、投稿者の同意だけでなく、医療広告上の体験談、投稿への関与、謝礼、媒体規約、個人情報を分けて確認する必要があります。
厚生労働省の2026年3月改正の医療広告等ガイドラインは、患者等の主観や伝聞に基づく治療内容・効果の体験談を禁止しています。Q&Aでは、特定の医療機関への誘引性がある体験談は掲載できず、肯定的な投稿の依頼、内容の改編、否定的な体験談の削除、肯定的な体験談の優先表示なども判断材料になると整理されています。
この記事では、2026年10月16日時点の厚生労働省、消費者庁、個人情報保護委員会、Googleの一次情報をもとに、医療機関のWeb・広報担当者が患者口コミの転載を検討するときの5つの確認を解説します。口コミへの返信方法は医療機関のGoogle口コミ返信、患者写真の掲載は医療機関サイトの症例写真もあわせてご覧ください。
結論:『本人が書いた』『同意がある』だけでは公開できない
最初に、誰が、どの媒体で、どの依頼・謝礼・編集を経て、何について述べた表示かを整理します。独立した第三者レビューと、医療機関が転載・選別・編集した広告は同じ扱いではありません。とくに治療等の内容・効果に関する主観的な体験談は、本人の同意や『PR』表示があっても、医療広告上の禁止が解消されるわけではありません。
掲載可否を口コミ単位で判断するのではなく、収集方法、原文、選定基準、掲載場所、広告への転用、個人情報、媒体規約を一つの台帳で確認します。判断が難しい場合は公開を保留し、医療機関の管理者、広告・個人情報担当、必要に応じて行政窓口や専門家へ確認します。
患者口コミの転載で揃える5つの確認
1.投稿者・媒体・医療機関の関与を分ける
口コミごとに、投稿者、元の媒体、投稿URL、投稿日、依頼の有無、謝礼、編集、掲載料、医療機関との関係を記録します。第三者サイトで、医療機関の影響を受けずに患者や家族が自主的に行う推薦は、誘引性が生じない場合があります。一方、医療機関が肯定的な体験談を有償・無償で依頼した場合や、運営者へ有利な編集を依頼・負担した場合は、誘引性が生じ得ます。
元の口コミが第三者サイト上に存在することと、自院サイトへ再掲載できることは別です。自院が選び、見出しを付け、予約ボタンの近くへ配置すれば、自院の広告としての確認が必要になります。埋め込み表示、スクリーンショット、直筆アンケートの画像化、動画での紹介も、形式だけで判断しません。
2.治療内容・効果の体験談を先に除外する
『痛くなかった』『すぐ治った』『この施術で症状が改善した』『先生のおかげで治った』など、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく治療内容・効果の主観的な体験談は、医療広告で禁止される対象です。厚生労働省の事例解説書は、口コミサイトからの転載、スタッフによる記載、体験談の編集、直筆アンケートの加工・転載、患者の主訴として記載した例まで示しています。
良い口コミだけを選ぶことだけが問題なのではありません。治療内容・効果の主観的体験談そのものに禁止があり、掲載対象をすべて転載した、原文のまま載せた、匿名にした、本人の同意を得た、注意書きを付けたという事情だけで公開可能になるとは限りません。『個人の感想です』という注記も、医療広告上の禁止を解除しません。
受付の分かりやすさや院内設備など、治療内容・効果ではない感想は直ちに同じ禁止へ当たるとは限りませんが、虚偽・誇大、個人情報、著作権、媒体規約、恣意的な選別、ステルスマーケティングを別途確認します。医療広告と一般広告の両方の観点を通します。
3.口コミ依頼・謝礼・評価指定を切り分ける
Googleは、実体験に基づく内容を、謝礼を付けず、評価や内容へ影響を与えずに依頼することは認めています。一方、支払い、割引、無料の物品・サービスなどを対価として、口コミの投稿・修正・削除を求めること、否定的な口コミを抑えること、好意的な利用者だけへ選択的に依頼すること、特定の評価や文言を求めることは認めていません。
医療機関では、プラットフォームが一般的な口コミ依頼を認めていても、医療広告規制の検討が不要になるわけではありません。とくに肯定的な治療体験の投稿依頼は、厚生労働省Q&Aで誘引性が生じる例として示されています。院内POP、会計後メール、QRコード、スタッフの声かけについて、対象者、文面、謝礼、タイミング、レビュー先、担当者を確認します。
消費者庁のステルスマーケティングQ&Aでは、事業者が好意的な回答だけを選ぶ、良い部分だけを抜粋するなどした表示は『事業者の表示』になり得るとされています。ただし、広告であることを明瞭にすれば医療広告上の禁止まで解消される、という意味ではありません。複数の規制・規約を独立して確認します。
4.個人情報・同意・利用範囲を記録する
氏名、顔写真、年齢、診療内容、受診時期、自由記述の組み合わせから本人を識別できる場合があります。病歴や診療の過程で得た情報は要配慮個人情報に当たり得ます。個人情報保護委員会は、個人を識別できる写真をホームページ等で第三者の閲覧に供する際、本人の同意が必要と説明しています。
掲載を検討する場合は、取得目的、掲載媒体、掲載内容、氏名・写真・属性の扱い、掲載期間、二次利用、外部広告への転用、撤回・削除の窓口、記録の保管を具体化します。法令上、医療機関の同意方法が一律に文書へ限定されているわけではありませんが、公開範囲と本人の意思を後から確認できる形で記録することが実務上重要です。
同意は、医療広告上掲載できない内容を掲載できるようにする許可証ではありません。また、匿名化しても、珍しい治療経過、日付、地域、写真、投稿文の検索によって本人が推測されることがあります。原文の保存先と公開用データを分け、閲覧権限と削除期限も設定します。
5.体験談を客観的な選択情報へ置き換える
患者が知りたいのは、必ずしも他人の感想ではありません。診療科、担当者、予約方法、受付時間、受診前の準備、費用、治療の標準的な流れ、主なリスク・副作用、問い合わせ先など、確認可能な客観情報へ置き換えられます。自由診療では、限定解除要件を含む必要な情報を同じページで分かりやすく示します。
院内アンケートは、診療・接遇の改善に活用する目的と、広告へ公開する目的を分けます。満足度等の数値を掲載する場合も、対象、期間、回答数、質問、回答方法、除外、謝礼、集計方法を保存し、恣意的な抽出や誘導がないか確認します。厚生労働省は、根拠や調査方法を示さない満足度表示や、極端に限られた対象・謝金で意図的に誘導された調査結果を問題例に挙げています。
口コミを使わずにページを改善する場合は、公式サイト・医療情報ネット・Googleの掲載情報を揃え、比較・優良性の表現は医療機関のNo.1・満足度表示も確認します。
口コミ確認台帳に残す項目
- 原文、投稿URL、媒体、投稿日、投稿者との関係
- 医療機関からの依頼、文面指定、編集、掲載料、謝礼の有無
- 治療内容・効果、接遇、設備、事実情報などの内容区分
- 転載、埋め込み、スクリーンショット、動画、SNS広告の掲載形態
- 選定基準、除外理由、並び順、見出し、周辺の予約導線
- 氏名、写真、診療情報、識別可能性、同意の範囲と記録
- 元媒体の利用規約、削除・修正時の同期方法
- 医療広告、景品表示、個人情報、権利、媒体規約の確認者
- 公開可否、代替する客観情報、再確認日、削除期限
よくある質問
Google口コミを自院サイトへ埋め込むだけなら問題ありませんか?
表示形式だけでは判断できません。自院サイトの広告として表示し、治療等の内容・効果に関する主観的な体験談を掲載する場合は、埋め込みでも医療広告上の確認が必要です。元媒体の規約、表示範囲、選定・並び替え、削除時の同期も確認します。
患者本人から掲載同意を得れば、体験談を公開できますか?
同意は個人情報や肖像等を扱う上で重要ですが、治療内容・効果の体験談に関する医療広告上の禁止を解除するものではありません。同意の確認と、広告内容の確認を別々に行います。
口コミ投稿を患者へお願いしてもよいですか?
『星5を付けてほしい』『良かった人だけ投稿してほしい』など、評価や内容を誘導する依頼は避けます。Googleでは、謝礼なしで実体験に基づく正直な口コミを求めることは認められていますが、肯定的な治療体験の投稿依頼は医療広告上の誘引性を生じさせる例として示されています。依頼文、対象、謝礼、媒体を公開前に個別確認してください。
受付対応への感想も掲載できませんか?
治療内容・効果の体験談とは別に検討できますが、自動的に掲載可能とは限りません。事実との一致、恣意的な選別、個人情報、職員名、著作権、媒体規約、ステルスマーケティング、周辺表示を確認します。迷う場合は受付方法や対応時間など客観情報へ置き換えます。
公開前チェックリスト
- 口コミの原文、投稿URL、媒体、投稿日を保存した
- 依頼、謝礼、文面指定、編集、掲載料の有無を確認した
- 治療等の内容・効果に関する主観的な体験談を除外した
- 転載・埋め込み・画像化を理由に確認を省略していない
- 好意的な口コミだけを選ぶ運用になっていない
- 個人を識別できる情報と要配慮個人情報を確認した
- 同意の目的、媒体、期間、二次利用、削除窓口を記録した
- 医療広告と媒体規約を別々に確認した
- 口コミを客観的な診療・予約・費用情報へ置き換えられないか検討した
- 管理者、広告担当、個人情報担当の確認日を残した
まとめ:口コミの評価ではなく、関与と内容を確認する
医療機関サイトへの患者口コミ転載では、星の数や好意的かどうかだけでなく、医療機関の関与、治療内容・効果の体験談、依頼・謝礼、個人情報、元媒体の規約を分けて確認します。本人の同意、匿名化、原文転載、PR表示だけで、すべての確認を代替することはできません。
公開できない体験談は、患者が自分で確認できる客観情報へ置き換えます。院内改善のためのアンケートと、集客のための広告素材を分け、収集から削除までを口コミ確認台帳で管理することが重要です。
患者口コミと広告ページを整理したい方へ
株式会社メディカルアトラクトでは、医療機関の患者口コミ・アンケートについて、元媒体、依頼方法、謝礼、掲載内容、同意、公開場所、代替する客観情報を一つの確認台帳へ整理します。お問い合わせページから、口コミを掲載しているページ、収集方法、利用中の媒体、院内アンケート、見直したい広告・SNSをお聞かせください。初回の相談では、公開を保留すべき体験談、客観情報へ置き換える箇所、医療・広報・個人情報担当の確認順序、元媒体と同期する項目を具体化できます。
医療マーケティングとWeb運用を含む支援範囲はサービスページ、制作・運用例は制作実績ページをご覧ください。
本記事は株式会社メディカルアトラクト編集部(医療マーケティング・Web担当)が、厚生労働省、消費者庁、個人情報保護委員会、Googleの公表資料を2026年10月16日に確認して作成しました。
参考にした一次情報
- 医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正、厚生労働省)(2026年10月16日確認)
- 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改訂、厚生労働省)(2026年10月16日確認)
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第5版(厚生労働省)(2026年10月16日確認)
- ステルスマーケティングに関するQ&A(消費者庁)(2026年10月16日確認)
- Maps User Contributed Content Policy(Google)(2026年10月16日確認)
- 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会)(2026年10月16日確認)
- ホームページ等への写真掲載と本人同意(個人情報保護委員会)(2026年10月16日確認)
本記事は2026年10月16日時点の公表資料に基づく一般的なWeb・広告運用の整理であり、個別の法律上・医療上の助言ではありません。広告該当性、誘引性、掲載可否、同意、権利、媒体規約は、表示内容、依頼関係、掲載場所、診療内容、地域、契約等により異なります。実際の公開判断は、医療機関の管理者、広告・個人情報担当、必要に応じて所管行政機関または適切な専門家へ確認してください。本記事は厚生労働省、消費者庁、個人情報保護委員会、Googleの提携・監修を受けたものではなく、広告適合、口コミ維持、トラブル防止、検索順位、問い合わせ、来院、売上を保証しません。