
医療機関サイトの症例写真は、治療を検討する人に具体的な情報を伝えられる一方、写真だけが強く目に入ると、個人差や費用、リスクが十分に伝わらないことがあります。写真の選び方だけでなく、同意、加工、説明、配置、公開後の管理までを一つの公開物として確認する必要があります。
厚生労働省の医療広告等ガイドラインは、患者等を誤認させるおそれがある治療前後の写真等を禁止対象としています。2026年3月作成の事例解説書第6版では、写真ごとに治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用等の詳細を付すことや、説明を別リンクやクリック後だけに置かないことが示されています。
この記事では、2026年10月2日時点の厚生労働省と個人情報保護委員会の一次情報をもとに、医療機関サイトで症例写真を公開するときの確認を5つに整理します。自由診療ページ全体の料金表示は自由診療ページの料金表示、医療機関SNSの公開前確認は医療機関のSNS公開前レビューもあわせてご覧ください。
結論:写真と説明を「症例パッケージ」で管理する
症例ごとに、元画像、掲載用画像、同意記録、治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用、撮影日、掲載先、公開期限、確認者を一つのパッケージとして管理します。画像一覧と説明文を別々に管理すると、更新時に別の症例の説明が付いたり、一覧カードだけ説明が抜けたりしやすくなります。
公開可否は写真単体ではなく、利用者が実際に見るページ全体で判断します。画像の近くに必要な説明があり、文字サイズや表示方法も含めて無理なく読める状態を基準にします。
症例写真を公開する5つの確認
1.掲載目的・媒体・期間まで含めて同意を確認する
個人情報保護委員会は、個人を識別できる写真は個人情報に当たり、ホームページ等で第三者の閲覧に供する際は本人の同意が必要と案内しています。診療への同意と、広報・広告への写真掲載の同意を混同せず、何を、どの媒体へ、いつまで掲載するかを確認します。
同意記録には、サイト本体、一覧カード、SNS、動画、広告、院内資料など利用範囲を分けて記載し、公開終了や撤回の連絡を受けたときの担当と手順も決めます。顔を隠していても、撮影部位、背景、日時、説明文などの組み合わせで個人を識別できる可能性があるため、「匿名化したから確認不要」と一律に扱いません。
2.元画像と編集履歴を残し、効果を強く見せる加工をしない
厚生労働省の事例解説書第6版は、実際には施術していない素材を治療成果のように見せたり、片方だけを美しく修正して効果があるように見せたりする表現を、虚偽広告として扱う例に挙げています。色、明るさ、角度、倍率、背景、撮影機材、撮影条件が大きく違う画像は、治療による変化と撮影差を区別しにくくします。
元画像を保存し、切り抜き、ぼかし、明るさ調整など掲載までの編集内容を記録します。個人情報を隠すための処理を行う場合も、治療結果に見える部分を変えないか確認し、同じ条件で比較できない画像はその事情を説明するか、掲載を見送ります。
3.症例ごとに治療内容・期間・費用・リスクを結び付ける
事例解説書第6版では、ビフォーアフター写真に通常必要とされる治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用等の詳細を付す改善例が示されています。複数の症例や治療方法に共通説明を一つだけ置くのではなく、それぞれの写真に対応する情報を結び付けます。
費用は実際の症例でかかった総額と内訳の関係が分かるようにし、追加費用が生じ得る場合は条件を整理します。期間・回数、リスク・副作用は医学的な確認を受け、広告担当者だけで省略や言い換えをしません。症例の結果がすべての人に同じように当てはまると受け取られる断定も避けます。
4.説明を写真の近くに置き、操作しなくても読めるようにする
写真をクリックした後だけ説明を表示したり、費用やリスクを別ページへのリンク先だけに置いたりする構成は避けます。事例解説書第6版は、リンク先への掲載や、利点・長所に比べて極端に小さい文字での掲載を認められない形式として示しています。
PCだけでなくスマートフォンでも、写真と対応する説明が同じ流れで読めるか確認します。アコーディオンやカルーセルを使う場合は、操作しないと重要情報へ到達できない設計になっていないか、写真と説明の対応が途中で分からなくならないかを実画面で点検します。
5.一覧・OG画像・SNS・動画まで同じ公開単位で確認する
詳細ページで説明を整えても、NEWS一覧、トップページのバナー、OG画像、SNS投稿、動画のサムネイルで症例写真だけを切り出すと、必要な説明が届かない場合があります。事例解説書第6版には、ウェブサイトのバナーやSNS、動画における症例写真の事例も掲載されています。
公開前には、写真が表示されるすべての場所を洗い出し、どの画面でも誤認を招く切り出しになっていないかを確認します。広告配信や再投稿など別用途へ広げる場合は、元の同意範囲と公開パッケージを再確認し、用途を自動的に拡張しません。
症例パッケージに残す項目
- 症例ID、元画像、掲載用画像、撮影日、撮影条件、編集履歴
- 掲載目的、媒体、掲載期間、同意記録、撤回・削除の連絡先
- 治療内容、期間・回数、費用と内訳、主なリスク・副作用
- 写真と説明の対応、医学的確認者、広告確認者、承認日時
- 詳細ページ、一覧、バナー、OG画像、SNS、動画での使用状況
- 公開URL、更新期限、公開終了日、差し替え・削除の履歴
よくある質問
術後写真だけなら説明は少なくてよいですか?
術前後を並べていなくても、治療効果を示すものとして掲載する写真は慎重な確認が必要です。事例解説書第6版は、術前のみ・術後のみの写真やイラストについても、通常必要とされる治療内容、費用、主なリスク・副作用等の情報を付す必要があると説明しています。
料金表へのリンクを置けば、写真の近くに費用は不要ですか?
写真から別ページへ移動しなければ費用やリスクを確認できない構成は避けます。症例に対応する治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用を、写真と一体で分かりやすく確認できる状態にします。
複数症例の説明をページ下部にまとめてもよいですか?
症例ごとの治療方法や費用、期間、リスクが異なる場合、まとめた説明ではどの写真に対応するか分からなくなります。第6版は、複数の写真に説明をまとめて付す例を不適切とし、それぞれの写真に詳細情報を付す改善例を示しています。
顔を隠せば同意記録は不要ですか?
一律には判断できません。写真や周辺情報から個人を識別できる場合があります。掲載目的、媒体、範囲を本人に説明し、組織の個人情報取扱ルールに沿って同意と記録を確認してください。判断が難しい場合は、公開を保留して個人情報保護の担当者や適切な専門家へ確認します。
公開前チェックリスト
- 掲載目的、媒体、期間、二次利用の範囲を本人へ説明し、同意を確認した
- 元画像と掲載用画像を保存し、編集内容を記録した
- 効果を強く見せる加工、撮影条件の大きな差、架空素材の転用がない
- 症例ごとに治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用を確認した
- 写真と説明が近く、リンクやクリック操作なしでも重要情報を読める
- 説明が利点や写真に比べて極端に小さく表示されていない
- 一覧、バナー、OG画像、SNS、動画で写真だけが切り出されていない
- 医学的確認者と広告確認者が、同じ公開画面を承認した
- 公開終了、同意撤回、情報更新に対応する担当と期限を決めた
まとめ:画像の枚数より、説明との対応を守る
症例写真の公開では、印象的な画像を増やすことよりも、各画像に対応する事実と説明を保つことが重要です。同意、元画像、編集履歴、治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用、掲載先を症例単位で管理し、公開画面で一体として確認します。
医師紹介や勤務情報を含むサイト更新の進め方は医療機関サイトの医師紹介、公式サイトと外部掲載情報の整合は医療機関の掲載情報を揃える手順も参考にしてください。
症例写真と説明の対応表を整えたい方へ
株式会社メディカルアトラクトでは、医療機関サイトの症例コンテンツについて、写真、同意範囲、治療内容、期間・回数、費用、リスク・副作用、掲載場所、更新期限を一つの確認表へ整理します。お問い合わせページから、現在の症例ページURL、掲載媒体、更新で困っている点をお聞かせください。初回の相談では、優先して確認する症例、説明の不足、院内と制作会社の担当、公開前後の確認手順を具体化できます。
サイト制作・運用の支援範囲はサービスページ、医療サイトを含む情報発信の考え方はLLMOページもご覧ください。
本記事は株式会社メディカルアトラクト編集部(医療マーケティング担当)が、厚生労働省と個人情報保護委員会の公表資料を2026年10月2日に確認して作成しました。
参考にした一次情報
- 医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省)(2026年10月2日確認)
- 医療広告等ガイドライン・令和8年3月30日最終改正(厚生労働省)(2026年10月2日確認)
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第6版(厚生労働省)(2026年10月2日確認)
- 医療法施行規則(厚生労働省法令等データベース)(2026年10月2日確認)
- ホームページ等への写真掲載と本人同意 Q4-15(個人情報保護委員会)(2026年10月2日確認)
本記事は2026年10月2日時点の公表資料に基づく一般的な情報整理であり、個別案件への法律上・医療上の助言ではありません。掲載可否は、写真、説明、ページ全体の構成、医学的状況、同意内容などによって異なります。掲載の適法性、治療結果、検索順位、予約・問い合わせの増加を保証しません。判断が難しい場合は公開せず、所管自治体の窓口、個人情報保護の担当者、適切な専門家へ確認してください。